電子食品流通研究所

【美味しく、健康に、人生を豊かにする食を】
電子食品流通研究所 樋口剛志さん

伊予郡砥部町の川井地区。梅の産地として有名な七折にほど近い里山で、田畑や果樹園が広がる。その地で、代々農業を営み、1976年に先代が設立した電子食品流通研究所を、昨年受け継いだ樋口剛志さん。


樋口さんの運転で、まずは園地へ向かった。急峻で、車1台分しかない細い山道を登っていくが、右側は崖となっていて運転は気が抜けない。「みかんって穏やかなイメージですが、こんな険しい道を行き来していることって、なかなか知られていないですよね」とガタガタ道の運転を続ける樋口さん。

そうして進んだ突き当たりに樋口さんの柑橘園が広がっていた。標高約300メートル、遠方の山々や、眼下には砥部のまちが見下ろせる。「あれが、紅まどんな、この辺が伊予柑、これは甘平……」と説明する樋口さん。収穫を終えたものから、これからのものまで、木々には光が降り注ぎ、キラキラと輝いていた。



■柑橘栽培の疑問から電子技法へ
電子食品流通研究所では、「電子技法」という技法で生産された農産物や加工食品を販売している。炭や水、空気という自然物を活用して、土を健康に育て、農薬に頼らない栽培方法だ。訪れた園地でも、炭を撒いている。

先代がこの技法を導入し、研究所を設立したのは、柑橘の慣行栽培への疑問がきっかけにある。「当時は農薬全盛の時代で、みんな使っているし、誰も何の疑いもなく撒いていたそうです。当然、浴びた人もいた訳で、それが原因で亡くなる人もいたのではないかと聞いています。父はそういうのを見てきて、それとは真逆の自然のものをできる限り活用した農法に関心を持ち、この技法に出会いました。最初は設備投資にもお金がかかるので、大変だったみたいです」と、当時のことを語る樋口さん。

技法を導入したのは、研究所を設立する7年前。先代が自ら実践しながら、その良さを広めてもいった。そして、今でも実践する人が全国にいる。「今も続いているというのは、いいものができるっていう証明だと思うのです。東京の百貨店で販売しても、これ、滅茶苦茶美味しいって言われるので、間違いないんだなと思ったのです」(樋口さん)

都会にない資源がここにはある
もともと、東京で働いていた樋口さんが、家業を継ぐためにUターンしたのは、2018年の春。過去には、大病を患い、生と死に向き合った経験も持ち、その時に、食の大切さを見直したという。美味しいものを食べて、健康になる−−、その想いを胸に畑に立ち、県内外のイベントや催事で販売する。就農1年目にして、最初に出荷した極早生はとても美味しくできて、青果のバイヤーが扱うようになったそうだ。「名古屋とか大阪からも声がかかっていまして、愛媛のみかんはちょっと違うみたいで、喜んでいただけるというのが分かりました」と、樋口さんは手応えとともに、地域が持つ可能性についても語る。
「都会に出た経験から、田舎のやり方というか、武器というのはすごくあるなと思います。都会には確かに物がいっぱいありますが、こういう資源はないので、それを持っているのは強みではないでしょうか。地域が過疎化していく中で、盛り上げるじゃないですけど、そういうことは引き続きやっていくことができればと思っています」



■美味しさとプラスαの価値を
砥部の柑橘農業の歴史を語る上で欠かせない、みかん小屋。木造で温かみのある色味の土壁の木造建築は、砥部独特の景観を生み出し、愛媛の近代化遺産を紹介する書籍でも取り上げられている。代々続く樋口さんのみかん小屋も、そんな地域資源の一つ。小屋の中に入ると葦簀の上に、ポンカンやデコポンが並べられ、出荷を待っていた。酸味が抜けて、甘味が増したところで、販売される。



出荷の前には、研究所の倉庫に設置されている電子供給装置にかけるという。「電子を負荷する、チャージするって言うのですけど、ここで微電流を流すことで、食べ物の酸化を抑制し、元の状態に戻してあげるということをします。そっと触れると少しビリビリしませんか」(樋口さん)。言われた通り、装置の上に置かれていたみかんに触れると、振動を感じた。装置にかけることで、水が細胞に浸透しやすくなり体に良いだけでなく、味もまろやかになるそうだ。この日は、小麦粉も同様の処理がされていたが、ミシュランの星を獲得するようなレストランでも長年使われ、その味を支えてきたという。

「美味しいものがあることで会話が弾んだり、お昼に食べたみかんが美味しかったから午後からも頑張ろうとか、皆さん、少なからず経験していると思うのですが、そういう商品を提供していくことが大事で、つくるならば、美味しいものをつくっていきたいと思います。さらに、美味しいだけでなく、プラスアルファの価値というか、人生を豊かにするじゃないですけど、そういうことを提供していくことが、まあ、自分の役割かなと思ってやっています」(樋口さん)

電子食品という名は聞き慣れないかもしれない。それが健康と豊かさにつながることを、自ら砥部の畑に立ちながら、県内外に出向いて直接伝え、届ける−−、樋口さんの挑戦は続く。



株式会社電子食品流通研究所
愛媛県伊予郡砥部町川井1556

購入できるところ
オンラインショップ、イベント、エミフルMASAKIのわくわく広場など。

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