【日常に彩りを添えるアクセサリー】
彩 木藤清香さん


松山の市花「椿」。その花びら一枚一枚から花の咲く形までもていねいに観察してつくられたアクセサリー。イヤーフックとなっていて、椿やタッセルが耳元でゆらゆら揺れます。「彩(saya)」の木藤清香さんが制作した新作のアクセサリーです。218日のお城下マルシェ 花園で、お披露目となります。


この作品をつくるために、木藤さんは、椿のことをいろいろと調べたそうです。
「椿にしても、品種によって名前や花言葉が違っていて、いろんなものに名前があることは、意味があることで、それがすごく面白いなあと思いました。品種改良などさまざまな人が携わっているし、その人たちの花への想いや土地への想い、そんな想いを私がつないで表現していくことで、また次の世代の子どもたちにとっても何かのきっかけになるかもしれないと思っています。また、そうした背景を知った上で制作することで私も愛着がわきますし、お客様もお話から納得していただければ、その方も愛着を持たれて、大切なものになるなと思うので、大事にしてつくっています」(木藤さん)



 ■頑張りすぎて苦しかったとき、「ものづくり」に救われる


ものづくりが好きという木藤さん。その原点は、小学校低学年の頃に母親に教わった針仕事。どんぐりのような「布ぐり」をつくり、親戚などにプレゼントして喜ばれたことが今も記憶に残っているそうです。絵を描くことも好きで、小・中学校は美術部に、高校も美術科のある学校で、デザインを専攻しました。「デザインってこう感じてほしいとか、こういうことを伝えたいというものがあっての形。それがすごく面白かったです」と当時を振り返ります。卒業後はデザインとは違う仕事をしていたこともあり、自分を表現することは、6年ほど封印していたそうです。


それがなぜ、再開となったのでしょうか。木藤さん曰く、「子育てなどのストレス発散です」。木藤さんは、明るく笑って答えていましたが、そのお話からは、とても追い詰められていたことが分かります。

「育児ノイローゼになっていたんだと思います。市役所に相談した時、辛かったねと差し出されたティッシュを前に、涙が溢れてきて、私、こんなにいっぱいいっぱいになっていたと気付きました。遊ぶこととか欲しいもの、そういうことを考えちゃいけないとずっと感じていたんです。主婦をしていた時に、生活のためにお金が必要なのでお仕事をして、ごはんを食べないといけないからつくって、家事をして……。ずっとずっとそうしていくうちに、過去に病気をしたことがあるのですが、それと同じ状況になりそうで、子どものためにこりゃあかんぞ! 私も楽しもうと思い、制作を始めました」(木藤さん)


それから、子どもを寝かしつけて落ち着いた夜中の1時や2時にゴソゴソと起きだして、少しずつつくり始めたそうです。「感情を表現したり、表に出したくても、話し相手もいなかったので、それでもどうにか出さないといけない時に、作品にぶつけていたんですね」と語る木藤さん。そうしてできた作品をFacebookに投稿したところ、職場の同僚が可愛いと褒めてくれ、まずは、その人のためにつくっていったそうです。当時は布やビーズを使ったコサージュやアクセサリーだったとか。その他の資材にもチャレンジし、今は、プラ板やレジンを主に使っていますが、レジンは型を自作することもあるほど、そして椿の花のようにパーツをプラ板でつくりそれを組むなどしており、自分だけにしかできない表現を大切にしています。組み合わせる時の感覚も大事にしていて、どの作品も1点ものです。
「ものづくりは楽しいのですけど、すごく大変でもあります。何千何万とある材料からイメージに合うものを選び、試作をしますが、失敗することもあります。なので、そのもの単品の単価は低いかもしれませんが、これに研究費などが積み重なった値段として買っていただけると、大切にしていただけるのではないでしょうか。つくり手が自信を持って販売して、お客様が自信を持って買う、そういう場所があるというのは大事なことだと思うので、今回、お城下マルシェ 花園に出店できるのは有難いことです」(木藤さん)

 

■アクセサリーをきっかけに、自分らしさを好きになってほしい

そんな大切なアクセサリーのブランド名を「彩」に。コンセプトを次のように木藤さんは語ります。「普段の日常に少しだけ彩りを添えるというか、特別な日でなくても毎日にちょっとだけキラキラを添えられたらという想いがあります。なので、どんどん使ってほしいです」


さらに、ご自身が苦しい思いをした経験から、母親や女性にエールを送ります。
「可愛いとか素敵と思ったものは、気にせず、どんどん使うべきだと思うんですよね。どうせ私なんかとか思わずに。私の作品をきっかけに、アクセサリーを楽しむ自分を好きになれたら、もっともっと他の素敵なつくり手の作品も楽しむことができると思うし、自分らしさを好きになるきっかけになればと想いながらコツコツつくっています」(木藤さん)

そして、母親ならではのアイデアも。ピアスだと子どもが引っかけてしまった時に大変ですが、イヤーフックだとそのようなことを気にせず楽しめるので、小さいお子さんを持つお母さんにはお勧めしています。また、これから入園入学やお花見などで活躍しそうな桜モチーフは、親子お揃いで楽しめるようなものを考えているそうです。
「お母さんが楽しんでいることって、子どもにとってもすごく誇りになると思うし、子ども自身も楽しむきっかけになると思います。逆に、我慢してそれを子どものせいにしてしまうと、お母さんも辛いし、子どもも何か引っかかるものがあるのではないでしょうか」(木藤さん)



■つくり手が胸を張れるよう、表現の価値を高めたい

 

今のところ、出店は愛媛県内のギャラリーでの個展やマルシェのようなクラフト市に限っているそうです。アフターサービスにもていねいに応じたいため、ネット販売はしていません。東京や大阪に自分が出向くよりも、逆に、皆さんに愛媛に来て欲しいのだとか。

「いいぞ! 愛媛。そういう風に意識が変わって、どんどん、つくり手が胸を張ってお仕事ができるようになったらいいな、みんな自信を持って欲しいなと思うのです。土地によって、作家さんが辛い思いをしながらつくらなければならないとか、もっと表現したいけど我慢しなければならないというのは、もったいないことだと思います。つくり手もそうですし、お客様の意識が変わっていって、それが広がると地域、市町村、県レベルのすべての表現の価値が変わるので、私がこだわって、わがまま言ってつくっていくのは、少しでも意味があるのかなと思っています。だからこそ、こだわり抜いていきたいです」(木藤さん)


■日常使いが大切。お悩み相談、引き受けます!
たまたま、まちですれ違った人が、自分のつくったアクセサリーをつけているというシチュエーションが夢と語る木藤さん。だからこそ、日常使いしてもらえるように、作品のお直しの相談も受けています。 「長く使っていただきたいので、このお花は好きだけどタッセルはちょっと苦手とか、イヤーフックよりもイヤリングがいいなとか、アレルギーがあるのでこの素材に変えて欲しいとか、どんどん相談してほしいです。確かに、コンセプトやテーマがあってつくっているのですが、使ってもらえることで彩りが添えられることが一番の目的なので、その場でできることはしますし、一緒につくりあげることも大事にしています」




また、お客様が長く無理せず使えるように、普段はこういう服装が多いけど、何色だったら使いやすいですか? といった相談にも応じていただけるそうです。そして、最後に、笑顔でこう語ってくれました。「相談とわがままは、いつでもどんと来いですね!」


そんな木藤さんと、花園町の青空の下でお話をしながら、作品に触れてみませんか。手に取って光を透かすと、よりその魅力が伝わってきます。ぜひ、お気に入りを見つけてみてください。



https://www.facebook.com/sayahandmade/

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